小さなリング状の陶磁、繊細な美しいガラス、リアルなスルメと茶碗の木彫、虹色の数字は螺鈿だし、スニーカーはケント紙でできていて。本物を目の前にして驚愕してほしい。制作過程の動画を見るのを忘れずに! 東京は三井記念美術館で11月26日まで(月休)各地巡回。
◆マーティン・スコセッシ監督の「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を観た。ディカプリオ主演で、アメリカの黒歴史を知ることになる実話に基づいた3時間半の超大作。白人によって追いやられた土地に石油が出て、大金持ちになった先住民たち。その富を横取りするために次々と殺人事件が起こるという恐ろしくて酷い話。
妻への愛情もありながら愚かな言いなりの男がディカプリオで、笑顔でも腹の中はわからないデ・ニーロは適役、先住民である妻を演じたリリー・グラッドストーンはとても魅力的だった。長さで尻込みする人もいそうだけど、緊迫感でクギ付けとなってダレることなく一気に進んだ感覚。ラストに監督自身が涙を浮かべながら”その後”を語る姿にぐっと来たし、エンドロールは印象的だった「沈黙 −サイレンス−」のときと同じ、自然界の中で人間はなんて愚かなのかと感じ入ってしまった。劇場の大画面で、大音量で、ぜひ。
◆9月に観た「デイヴィッド・ホックニー展」(東京都現代美術館・11月5日で終了)は作品の素晴らしさはモチロン、86歳のパワーに圧倒された。新たなものへの興味と挑戦、そして体力。天才って技術だけではないのだな。凄すぎてなんだか書きそびれてしまった。
10月に軽井沢でたくさんのキノコに会えた。今年は猛暑で時期がずれ込んで、タマゴタケが中旬も続々と出ていたし、逆にクリタケは遅れていて会えなかった。こちらではほんの少しの紹介。インスタグラムの方ではキノコ多めにアップしているので、興味ある方はフォローしてみてください。
〜2023年10月〜
]]>月刊誌/カット・コラムイラスト/ペーパーハウス(2022-23)
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児童書/三話のイラスト/国立科学博物館 監修/山下美樹 作/西東社(2023)
]]>この時代の児童雑誌の挿絵は、今と比較にならないほど質が高くて、憧れであり目標である。絵画的で大人っぽさもあるこの時代のほうが、キャラクター的なかわいさの現代のものよりも、ずっと美しくて洒落てて好き。(6月18日まで・月休)
◆映画は、少し前に「TAR」、公開すぐに「怪物」を観に行った。
ケイト・ブランシェットの怪演が話題だった「TAR」は世界的な指揮者が主人公。古典的な題材でもあり、現代的な創りでもあり。序盤はやや緩慢に感じていたら段々と不穏になり、現実と幻想の判断がわかりにくくなってきて、ラストの凄まじさにドクドクしながら帰宅した。自分なりの解釈はあるものの、いろいろなレビューを読んでは「そういうこと?」と思ったり反芻している。
カンヌで二つも賞を獲った是枝監督+坂元裕二脚本+坂本龍一音楽の「怪物」もやはり、後々も引きずっている。火事で始まり、台風が来て、美しい晴れに。夜の諏訪湖は街明かりの真ん中のブラックホールのよう。一部分から見た景色は、別の方向から見れば違う景色であるということ。
役者たちの演技は皆素晴らしく、中でも田中裕子には感嘆!あのスーパーでの行動、ホルンとトロンボーンの場面にはグッと来た。どちらの作品も心がザワザワさせられてしまい、モヤッとわからないところもある。再度観たら解釈が変わるかもしれない。すごいものを観た。
〜2023年6月〜
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児童書/一話(見開き5枚)イラスト/秋山宏次郎 監修:ささきあり 作/西東社(2023)
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<月刊絵本>キンダーメルヘン 6月号/作:山田マチ/フレーベル館(2023)
]]>やはりぶっ飛んでいた「スイス・アーミー・マン」の監督と知って、あぁ!ナルホドと思った。アライグマの場面は最高だし、石の場面は大好き。下ネタあり、笑いあり、ほろりと親子愛。今までのアカデミー賞のタイプとは全く違うし、ついて行けない人もいるかもしれないけど、この体験はきっと面白い。
◆もうひとつ映画「フェイブルマンズ」も観に行った。スピルバーグ監督の自伝的作品で、両親が亡くなってすぐに製作されたという。こちらも長く151分。ゴールデングローブ賞は作品賞と監督賞を獲得したけれど、アカデミー賞は7部門ノミネートで無冠に終わって残念だった。母親役のミッシェル・ウィリアムズがとにかく魅力的で、主演女優賞がこちらのミッシェルでもおかしくないくらい。
時代の空気感や、土地の雰囲気、変わってゆく関係。アメリカは広く、住む場所により人々も違う。ずっと夢中になってきた映画の情熱は変わらずに持ち続けている。ラストに登場する大監督を演じている人にびっくりした! スピルバーグ監督との接点を感じない人だけどニヤニヤしてしまった。それにしても、さすがスピルバーグ、間違いない作品でとても良かった。母が弾くピアノの音色がノスタルジックな気持ちになって心に残る。
〜2023年3月・その2〜
]]>一本目は、サム・メンデス監督の「エンパイア・オブ・ライト」。イギリスの海辺にある映画館で働く中年女性と、新しく加わった若い男性。1980年から1981年のサッチャー政権下、映画はフィルムの時代。スペシャルズの新譜のレコードをお見舞いに持っていくところに懐かしさでグッと来た。そう、あの大きさをワクワクしながら持ち歩いたし、友達と貸し借りをしたり部屋に飾ったりしたなぁ。
傷ついた過去、傷つけられる日常。未来はきっと明るいと思いたいけれど、2023年現在だって、パワハラ・セクハラも人種差別も無くなっていないし、不安定な心の人も多そうだ。優しく接してくれる人もいるのが救いであり希望なのか…後半に涙がとまらなくなってしまった。じんわり心に染みる作品だと思う。
◆そしてパク・チャヌク監督の「別れる決心」が二本目。韓国の山頂から始まり、海辺で終わる。睡眠障害の刑事が夫殺しの容疑者に惹かれてゆくが、現実と想像が時に混ざり込んでいるのは心の揺らぎを感じたけれど、思いをやたら吹き込んで録音するのは謎だった。ズームの多用もちょっと変だけど不思議な浮遊感があり、夢の中の出来事にも感じる。
山の形、海辺の岩、気の遠くなる階段に急な坂道など、こんな場所が本当にあるの?!ってくらいロケ地が面白かった。ラストは衝撃的で、キム・ギドク作品に通じるものがあった。何度か観ると、また違いが出てきそうな、なんとも興味深い独特の作品でオススメしたい。
本や映画などアートは、束の間の幸福感を与えてくれて、栄養となって残ってくれる。どちらもとても良かった。やはりちゃんと観ておかないと。
そしてミモザがほころんでいる。それを目当てに散歩する。なんて美しい!沈丁花も香ってきて、それもいい。アミガサタケはまだかとソワソワし始めている。
〜2023年3月〜
]]>映画は「ザ・メニュー」というグルメ界をキョーレツに皮肉った怪作。船でしか行けない孤島にある超高級レストランに、予約の取れた10数人の客たち。店側も客側も胡散臭いし、冒頭から不穏な空気が漂っている。伝説のレストランだったエル・ブジに憧れたことを思い出したり、たしかに、あるある、なんだかね、のこの感じ。古くは「コックと泥棒〜」、新しくは「ミッドサマー」の雰囲気を思い出した。ちょっと疑問なところもあるのは置いとくとして、洗練されたホラーを楽しめた。
◆久しぶりの展覧会は「junaida exhibition IMAGINARIUM」へ。junaidaの絵本は手に取ったことがあり、日本人離れしたセンスに驚いたので、これは原画をじっくり観たかったから。
会場の作りも素敵だし、ずらりと並んだ端正な作品群に圧倒された。インクとガッシュで彩られた美しい色々!細かく緻密に描かれたワクワクする世界。手描きの技術は息を呑むほどすごい。隅々まで楽しく、美しく、本当に描くことが好きなんだなと思う。
絵本「の」のアイデアが特に好き。絵本を買うつもりだったのに、あまりに素晴らしい原画を観た後だと、印刷の絵にがっかりしてしまって… 仕方ない事だけど、あまりに原画が美しかったということ。こんなに才能のある人がいるんだなんとただただ感動した。東京の市部、立川のPLAY! MUSEUMで2023年1月15日まで。その後巡回あり。
〜2022年12月〜
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はっけん!(がっけん つながるえほん)/11月号 おはなし 作・山本和子/学研教育みらい(2022)
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